製材。原木からのメッセージ その2

9本ある原木のうち、1本だけ4mを超えるものがありこの木から製材が始まりました。
20年の付き合いになる渡部さんから
この木も他の原木と同じ長さの2m強でまずカットし製材しますか?と聞かれました。
鞄にする場合家具などと違いそれほどの長さの必要もない為、
近年筋力の低下が心配な作り手が木取りのため長い材を扱う姿を想像すると
無理無理、4mなんて。半分にしていただいた方がと提案してみました。
う〜ん、そうだね、、、。と作り手。
しばらく間をおいて、やっぱり4mのままでお願いします。と。
へ?大丈夫なの?工房にこんなに長いのどうやって入れるのかしら??
内心思いましたが、 何か心に思うことがある様子。
長い木のまま製材の機械に運ばれることになりました。

大きな爪のような留め具3か所が降りてきて原木が動かないよう固定されると
会話が聞こえなくなるほどの音の響きで大きな帯鋸が回り始めました。
帯鋸に向かって原木がスライドされながら
一番外側の樹皮が切られて落ちました。
痛みが身体を走ったような不思議な感覚が襲いました。
正直に言うと気分が悪くなるような瞬間だったように思います。
痛くて怖くて涙が出ました。
切られて見えた木肌は、確かに日頃目にするシナノキでした。
下に落ちた材もシナノキでした。
命をいただいているんだと実際の感覚で感じた瞬間でもありました。
作り手は私のところへ来て
「やっぱり、長いままにしてもらってよかった。」と言いました。
そっかあ、、、。心に思っていたこと、それだったんだな。
あとで聞くと、渡部さんも製材の作業員の方も半分に切ってしまうのをためらっていたそうです。
温かい眼差しに見守られながら2回目。帯鋸にあたって材がよく見えると、節もシミも割れもなく、本当にきれいな真っ白なシナノキで驚きました。       亀井広子



打合せに入る渡部さんと作り手。

長い原木をどうするかと。


やっぱり4mのままでと。

大きな重機で運ばれローラー台へ。

ミリ単位の指示を作業員の方へ伝える渡部さん。

木肌 きれいでした。